白兎を追いかけて | ナノ






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「よっしゃ来たで海やー!」

「…はしゃぎすぎや」

ぴょんこぴょんこ跳ねてとてつもなく嬉しそうな金ちゃん。すかさずツッコミを入れるのは言わずもがな光くん。


主張しすぎやと思わずツッコミをいれたくなるギンギンの太陽。雲一つない青空が気持ちいい。

そして本日の降水確率は0パーセント。

絶好の海日和や!


「ねぇ蔵っ、海がめっちゃ綺麗やっ!キラキラしとるし青いねんっ。これが所謂ごばるとぶるぅーなん?」

「せやで、綺麗やね。柚もめっちゃ楽しそうやなー」

「早よ入りたい!」

「ははは。ほな着替えんと」

「わかった!着替えてくる!」


水泳バッグを片手に、ウチはマッハで脱衣場に向かった。

早よ海の中に入りたい!絶対気持ちいいんやろうなー。
蔵と水のかけ合いっことかしたりして。あーかけたなぁ!仕返しやーっ。うわ、ちょ堪忍ーみたいな……でへ。

あ、ごめん、今の嘘。ユウジと小春ちゃんと同じ匂いがした。ウチらがする前にあそこがするわ。


髪も2つに結んで昨日買った水着も来て、よっしゃ行くでー!と脱衣場の扉を開けようとしたとき。
外にいる女の子グループの声が聞こえてきた。


「さっきの人すごいかっこよかったねー!」

「ほんとほんと!なにか団体で来てたみたいだけど高校生かなー?」

「みんなすごくかっこよかったけど一際目立ってたよね〜っ」

「あの薄い茶髪の人でしょ?わたしもうすごいビンゴだったー!」


……すみません、すごく心当たりがあるんですけど。


「あとからナンパしてみようよー、携番とか知りたいっ」

「オイルとかも塗ってもらっちゃおー」

「キャーッ!それいいっ」

とても楽しそうにはしゃぐ女の子たちの声。高らかに響いていて、ウチの中枢神経らへんをこの上なく刺激したのだ。


…ぷちん。

バンッ!


怒りそのままに勢いよく開かれた扉。


蔵を狙っているやて?蔵はウチの彼氏や。あんたらなんかにナンパなんてさせへんし渡さへん!
ちゅーか蔵はナンパとか嫌いやねんで!

あんたらなんか、あんたらなん…………………。


「えーなにー?この人怖くない?」

「しかもこっち睨んでない?」

「ドアにヒビ入ってるし、絶対ヤバいよこの子」



めっちゃ可愛いねんけど!


やばいやばいやばい。盗られる。蔵のハートが盗られてまう!

この子らの美貌やったら蔵もコロリと寝返ってまう!

「…………っ!」

あかん。いろいろと負けとる。

完全なる敗北感を胸に、ウチが今せなんことは一つ。



ダダダダダダダ!

一刻も早く、蔵を死守するんや――――――!
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