白兎を追いかけて | ナノ





未だに頬擦りしてるし。

めっちゃ可愛いなぁ、猫やんか。


「なぁ柚、俺のこと好き?」

「好きーっ、好き好き大しゅき。世界で一番大好きー」


うっわ。

今、大しゅきって、大しゅきって言うた……!

可愛すぎや。俺を殺す気か!


文化祭の告白以来の熱烈さに心臓を射抜かれた。


「蔵は?ウチのこと好き?」

「好きやで。大好き」

「ほんま?嬉しーっ、蔵ノ介好きーっ」


首の後ろへ腕を回されさっきよりも密着した形で抱きつかれた。

うわー、こんな所で発情してまうわ。


「柚がキスしてくれたら、俺もっと柚のこと好きになるで」

「っ、ほんま?」


「嘘は言わんで」

「でもウチ、恥ずかしい…」

やっぱ恥ずかしいからキスしてくれんかったんやな。


「これは夢やろ?夢なんやから、大丈夫やて」

「せやっ。これ、夢やんな」

「そうや。やからどないに恥ずかしいことしても大丈夫っちゅーこと」

「ん。…分かった」


戸惑いながらもコクリと頷く。

そんな柚を確認すると、心の中で大きなガッツポーズをした。


上目遣いのまま、顔を近付ける愛しい女の子。


「目ぇ瞑らなあかんで」

「…うん」



早よ、早よ。

早よキスして欲しい。

距離が縮まって行くのがあまりにもゆっくりで、ただもどかしい。


早よ、柚のキスが欲しい。俺をたくさん焦らして降ってきた唇。

今まで何度もキスをして来たはずなのに、今回は違う感覚だった。

柔らかくて、温かい、純粋なキス。


柚にキスをされているという事実が嬉しくて、ひたすらその喜びに浸っていた。


…それも束の間、夢心地もたった一瞬。
柚の唇は数秒で離れてしまったのだ。
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