―――…
うわー、もうこんな時間や。
めっちゃ柚待たせとるがな。
俺の予想では、たくさん待たせたからといって相合い傘をしてくれないだろうと読む。
(柚と相合い傘したいなー)
雨に濡れたらあかんでーなんて言って接近してまいたい。
ほんで小石に躓いたとかで俺に抱きつくように倒れてきたらこの上ないエクスタシー!
傘で隠して二人でキスして、…って柚が許してくれるわけないか。
…とまぁこのように、俺の脳内では常に柚とのあんなことこんなことを妄想しているわけで。
柚が授業中寝言で発したように、スケベやねん。
きっと柚の夢の中でも俺は変態やったんやろう。
いつも柚に拒否られてばかりやからちょっと寂しいなぁとか思ったりして。…まぁ公共の場でちゅー迫る俺が悪いんやけど。
たまには柚から俺を求めてくれんかなぁー。
柚を苛めるのは楽しいけれど、やっぱり彼女には求めて欲しい。
(そういえば俺、柚にちゅーされたこんないなぁ)
そんなことを考えながら、俺は図書室の扉を開いた。
“図書委員不在のため、本の貸し出しは年組番号と本の題名をお書き下さい”
そんな札が貸し出し机に貼ってあった。
…図書委員、おらんのか。
てか、図書室ん中全っ然人気がないんやけど。
ほんまに柚、おるんやろうか?
俺が遅いから先に帰ってしまったんやないかと思いながら、一応図書室内を回る。
やってもしおったら大変…―、っておわ。
奥の本棚を通り過ぎようとすると、足下で体操座りをして眠っている少女に気付いた。
「…ほんまにおった」小さく縮こまって眠る柚が可愛くて仕方ない。
「…すぅ…すぅ」
寝顔がこんなにも可愛い子なんて他に知らんで。
一定のその寝息のリズムが、長い睫が、半開きの小さな唇が、全部大好きや。
割れものように大切にせな。
めちゃくちゃにしたら、壊れてしまいそうやから。
屈んで、慈しむように頭を撫でる。
(髪、柔らかいわぁ)
顔を近付けると、シャンプーのええ香りがした。
(…エクスタシー)
こんなにも、柚が愛しい。
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