白兎を追いかけて | ナノ






――――…


「どわっはっはっ!ほんまあん時の柚には笑わかされたわ!」


休み時間、ウチはというと謙也に大笑いをされていた。もうしつこいぐらい笑っている。馬鹿にしすぎや、アホ。


「…謙也うっさい」


「夢の中まで白石って、おまえどれだけ白石中毒っちゅー話や!」

「うっさい黙れヘタレ」


「あーあかんわ。あの時の必死な柚の顔を思い出すだけで……ぶっ!」

「っだから、恥ずいから笑うなーー!」


いつもウチがからかう側やからってここぞとばかりに攻撃するな!

謙也の頭をポカポカと叩いてみるけど、効果は全くなしで、奴は涙を流して笑っていた。



「あーもう、どないしよ。蔵に合わせる顔があらへん」

「ええやん。絶対白石喜んでるで」

「ちゃう〜、絶対気持ち悪いって思っとる〜〜。それか呆れとるんや」


寝言でやで?

寝言で彼氏を変態扱いする彼女なんて……っ。

(あ〜もう自分が信じられん!)



「白石の方見てみぃ」

「みみみ、見れへん!」

「ええから見てみや」


謙也に促され、恐々としながら蔵へ目を向ける。

クラスメートと楽しく喋る姿がそこにはあって。

包帯を巻いた左手の頬杖と、声を出して笑っている笑顔が妙にツボだった。


(かっこいい……、)



ウチの視線に気付いたのか、蔵ノ介がこっちを見た。

途端、その表情が優しい笑みに変わり、先ほどのウチの行動から、クスリと笑っていた。

(…っっ!)


当たり前のように蔵が近くにいる。

一緒のクラスでよかったな、って、今更感じた。



「はぅ〜〜…」

「なんやねん、キモイで」


「やってやってやって、蔵がかっこよすぎるんやもん。今ウチに笑うてくれたで、むっちゃ優しく!あかんわーキュン死にしてしまうわ」

「片想いみたいやなぁ自分」

「うん!」


「…………。」



胸いっぱいに蔵ノ介。

その行動や仕草の一つ一つが愛しすぎて、胸の高鳴りを抑える術をウチは知らない。


「……で、白石がかっこいいんわよう分かったけど、例の寝言についてはどうや?」

「怒ってはる!」

「んーせやろ。………………………………って、は!?


「やって蔵、現在進行形でこっち睨みつけてはる〜」

「(それは嫉妬して俺を睨みつけてるっちゅー話や!)」
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