白兎を追いかけて | ナノ





ウチより二回りも大きな彼をぎゅっと抱き締めた。

抱き締めたく、なった。



「俺の気持ちを知って、こないことするなんて…ええ度胸やな」

「蔵は、無理やり襲ったりせえへん」


ウチは、ずるいと思う。

ほんまにずるいと思う。


「…せやな」

「ごめん」


「なんで謝るん」
「やって…、」


蔵の優しさに甘えてる。


「俺は柚を大切に思うとる。柚がその気になるまでしたりせえへん」


「ウチかて、蔵の頼みはなんでも聞きたいけど…やっぱり怖いねん」

「…うん、分かってるで」


「ちゃんと…その…、」

「ゆっくりで…ええよ」


やっぱりあなたは優しい。

ウチの頭を撫でる手つきも包み込む腕も、何もかもが優しい。


降ってきたキスを拒む理由はなに一つなかった。

舌を絡めて愛を確かめる。

混ざり合う唾液がこんなにも心地よいだなんて。


あなたの熱に、ウチは依存しすぎている。


「ふぅ、…んっ」

「もっと舌絡ませな」

「あっ……ふぁ」



もっと、もっと、もっと。

キミが欲しい。



「柚の声、可愛いで」


胸をくすぐるキミの言葉。


もっと聞きたい。

もっとキミを感じたい。


唇が離れて銀色の糸がぷつんと切れる様がエロい。


ウチの唇の回りを指で拭い、蔵はそれをウチに見せつけるかのように舐めて見せた。
そんなあなたはもっと官能的だ。


「はぁ…はぁ、」

肩で息をするウチと、平然と見下ろす彼。


「…かっこつけていろいろ言うたけど、俺にも理性の限界っちゅーもんがあんねん」

「…ん、うん」


頭がぼーっとするわ。

蔵の言いよることがよく頭に入らん。



「我慢はするで?」

「うん…」


「せやから、理性が失われたらよろしゅうな」

「うん……、って、え!?」


聞き捨てならない言葉に、覚醒。


それって、ちょ…っ!

話が違うで!


「柚が可愛すぎて、思わず食べてしまうかもしれんから」


そう告げて、頬にキスを落とす狼さん。



花風柚、貞操の危機に気付きました。
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