白兎を追いかけて | ナノ



何十センチも差のある彼を見上げる。

ほんの一瞬逸らされそうになったけど、ウチは見つめ続け、微かに震える口を開いた。





「蔵は……その、セ…、えっちしたいて…思わんのかなぁって」



言った途端、急激に羞恥が押し寄せて来た。


(やっば…むっちゃ恥ずかしい)


分かっていたのに、言って後悔。

もう蔵の顔が見れない。
どない顔してんのやろ。

ウチのことなんて思ったやろう。

変態?痴女?スケベ?


もうなんでもいいから何か言って――…!



「…に、決まっとるやろ」

「…へ?」


もう一度蔵を見上げて、ウチは言葉を失うことになる。


「…柚と、セックスしたいに決まっとる」


あまりにも蔵の顔が真っ赤で。

照れている割にはウチを真剣に見つめてくれていて、逸らせない。


「……そう、なん?」

「せや」

「我慢…してるん?」

「めちゃめちゃ我慢してるで」


その言葉にはめちゃめちゃ力がこもっていて、めちゃめちゃ我慢してるんだと、分かってしまった。

嬉しいような、恥ずかしいような…むっちゃ複雑。



「誰に吹き込まれたかはまぁ予想つくけど、俺の想いは柚の想像を遥かに越えてるで」


「え、…え!?」


「こんな可愛い彼女とちゅーしてたら、それ以上を望むに決まってるやろ」


「蔵……」


ほらまた好きが募る。

体全身が蔵を好きだと言っている。


ねぇあのね、時々思うねん。

好きが募りすぎるとどうなるのかって。

抱き締めてキスして、それで足りないときにはウチはどうするのやろう。



今はまだ、知ってはいけない気がした。
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