「財前、謙也とダブルスしてき。ラブルスが待ってるで」
ウチの後ろから現れた蔵は、コートを親指で指していた。
案の定、そこにはラブルスペアが待ちわびるように手を振っていた。
「わざわざありがとうございます。ほな、」
どこか棘のある言葉を残して光くんはウチらの横を通り過ぎて行った。
そしてすれ違い様に、彼は囁いた。
「聞いてみたらどうです?」
それは、もちろん……。
「……っ」
ただ、ビクリと反応をした。
あかん…、真後ろに蔵がいるのにわざとしたやろ光くん。
嫌な展開になりそうなのがありありと分かる。
「柚」
「ひぇっ、…はい」
恐る恐る振り返ると、そこには天使のような悪魔の笑顔。
「後で、覚えとき」
「………………はい」
圧倒されて、頷くしかなかった。
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