そういえば今は部活で。
近くに誰がいてもおかしくない状況で。
聞かれてしまった。
「ひっ…光くんっっ…!」
この毒舌生意気後輩に!
こんなにも恐ろしいことはない。
何故なら彼は今、とてもニヤニヤしているのだから!
ものっそいよからぬことを考えている。この表情は…ヤバい!
「先輩、今…」
「わわわっ!あかんっ」
浪速のスピードスター以上の速さで光くんの口を塞ぐ。
あんな独り言を聞かれてしまうなんて…!
(一生の不覚や!)
光くんはウチが両手で一生懸命塞いでいるのにも関わらず、軽々しくそれを振り払った。
「先輩今、セックスって」
「ちょ、光くんっ――!」
相変わらず光くんは笑みを浮かべていらっしゃる。
あぁもうウチはいじめられるんだ。絶対に弱みを見せてはならない人になんってことを……。
「先輩ら、まだヤってないんすか?」
「っ…、まだって、まだって…!」
あたかも遅いような言いようやない!
まだ付き合って日は浅いし、そういうのは大人になってからが普通や。
「柚先輩、ウブそうやし…まぁしゃあないと言えばしゃあないわ」
「なっ…!そういう光くんは……!」
「ん?そらまぁ」
(…っっっっ!)
「はは、破廉恥や!」
なんやねんその澄ました顔は!
どっちが年上なのか分からへん。
「まぁさっきもセックス言うてましたし、興味あるんでしょ?」
「ない!あるわけないやろ!」
「ほんならなして唱えてたんすか」
「唱えてへん」
「悩んでる思うて近付いたらいきなりセックスって…ぶっ」
っ!こいつ、吹き出しよったな!
ウチの頬が赤く染まっていくのが恥ずかしくてたまらない。
「笑わんといて」
「やっておかし…ははっ」
「友達が、聞いてきたんやもん」
「へぇー。…なんてです?」
「そのー…、や、ヤらんの?って」
「それでむっちゃ動揺してはったっちゅーことですか」
…お見通しかこのやろう。
「まぁ白石部長はセックスを我慢してるて思いますけどね」
「…………うん」
って、え!?
っ、ちょ…ちょ!
「光くんも、…思うん?」
「そら当たり前ですわ。やって白石部長は……、ホラ」
光くんが微かに笑うと、ウチの後ろへ視線を向けた。
ホラ、の続きはウチを覆う影で分かった。
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