白兎を追いかけて | ナノ


「朝は柚のおはようのちゅーで目覚めたいし柚の作った味噌汁を飲みたいねん」

「は?」


「柚にネクタイを絞めてもらって、いってらっしゃいのちゅーで送ってほしいしおかえりのちゅーで迎えてほしい」

「何回ちゅーすんねん」


「ほんで柚に背中流してもらって、煌めく長い夜はベッドの上で愛の情事を「ストーップ!」
思わず身を乗り出して蔵の口を塞いだ。

あかんあかんあかん。
それ以上喋ったらあかん!


「俺の未来予想図になんか問題あるん?」

「問題大アリや」


(…こんの変態!)


ちゅーか未来予想図やなくて恋愛予想図やんか。

…ウチしか出て来てへんし。



「ちゅーか、蔵はテニス続けへんの?蔵ならプロにもなれそうなんに」


四天宝寺の白石蔵ノ介っちゅー名前は、全国に轟いてんねんで。

蔵なら……、


「テニスは好きやで。せやけど、熱を入れるのは今度の全国大会までにしようかて思っとる」

「っ!…、なん、で?」


蔵ノ介からテニスがいなくなると、とても寂しいような気がした。

やって、蔵はテニスでテニスは蔵で。


「なんで柚がそないな顔するん。
別にやめるわけやないで?趣味程度にはやりたいて思うとるし」


そう言って、蔵はウチの頭を撫でた。
いつものように笑みをもらしながら、優しい手つきで。



「医学部に進んで、医者になりたいなぁて思ってる。ほんでな、絶対柚を幸せにするんや」


「……っ、蔵」


蔵の未来に当たり前のようにウチがいるのは、これ以上にない幸せで。


「結婚とか…遠い日のことはよく分からんけど。……けど、」


ウチも蔵との未来を願うから。


「明日も明後日も十年先も、蔵と一緒におりたいって、…思う」


蔵の手をきゅっと握って、照れくさいけど直視してみた。

蔵のかっこよさは心臓に悪い。

彼女ながら思うねん。

蔵は普通に尋常やなくかっこいいし、好きやから余計キラキラして見えるし。



「……あかん」

?なにが、……?


「ムラムラして来た」

「っ、は!?」


「一回ちゅーしたら治る気ぃする」

「な、なにいうてんねん!
ここ教室やで!」

「どうせみんな見てへんて」

「いや、ちょ、あんたが言うても全然信用ならんのやけど!」


その自信の根拠はなんやねん!


「いつも邪魔な謙也もおらんし、ええやろ?」


っっっ!よくなーい!

「っちょ!近付きすぎ!あかんあかん絶対あかん!っっっ…、か、カムバック謙也〜〜〜っっ」



カムバック!ヘタレ!

かのヘタレ謙也がとてつもなく尊い!


どうやらウチの変態彼氏は止まらんみたいです。
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