白兎を追いかけて | ナノ




純白のドレスを来た自分を見て、違和感はなかった。

馬子にも衣装とはこのことやな、なんて一人思ったりしたけど、やっぱり蔵に見せたいなぁって。


綺麗ってただ一言、言ってもらえるだけでウチは最高の幸せを感じるだろうから。



だから優勝なんて、さっぱり狙っていなかったのに。



「優勝は三年二組花風柚さん!」

「は。え―――!?

…まさか優勝してしまうなんて。


「驚き方がさっぱりプリンセスやなくなっとるで花風さん」

「おぁっ、あかんあかん」


笹山さんに言われて我に返るが興奮も驚きも一向に収まらない。

やって、優勝って……。

ウチ?ウチが?


「優勝おめでとうございます!花風さんっ、今のお気持ちをどうぞ」

「何だかとっても信じられんです」

「花風さんの変身を手掛けた笹山さん、ドレスといいメイクといい素晴らしいですね!」

「えへへそれほどでも〜」


優勝トロフィーを受け取る笹山さんを見て、拍手を送る。

(ありがとう、笹山さん)



「花風さん、行ってきぃや」

「?…え?」


「待っとる人がおるで」

「???」


待っている人?

誰のことやろうと思って笹山さんの視線の方向へ振り返る。


壇上の下にいたのは、愛しい人。


「柚、おめでとう」

「あ、…蔵っ」


「あのー、ちょっと柚借りてええですか?」

「ええでええでー!あ!ドレス汚したら許さんからなー!」

「え!?ちょっとまだインタビューと写真撮影がまだ…!」


司会者の言葉を無視してウチは走り出した。

やってウチは蔵一直線。
蔵しか見えへんのやから仕方ない。


ここから飛び降りたって、キミは必ず受け止めてくれるから。


「天使か、アホ」

「羽があるんやったら蔵に受け止めてもらったりせえへん」


全身で受け止めてくれた蔵を絶対離さんようにぎゅーっと抱き締めた。


ウチの大好きな温もり、匂い。離したない。


「あんま可愛いことせんといてや。抑え効かんくなるやろ」

「ん?」

「…なんもあらへん。ほなちょっと目立つから場所変えしようか」


蔵の温もりを感じていたら、みんなの視線なんてどうでもよかった。


あぁこの瞬間が、ずっと続けばええのにって、純粋に思った。
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