白兎を追いかけて | ナノ



――…


「飲み物はやっぱり青汁が一番や!」

「なに言うてんです。ぜんざいやろ」

「ぜんざいは飲み物ちゃうっちゅー話や!」

「自販機にあるんやから飲み物ですわ。謙也さんアホ?」


俺を挟んで言い合うのやめてくれんか、ほんま。


「…付き合ってられんわ」

「世界一のペットは俺のイグアナやな」

「俺のカブリエルとエクスタちゃんに決まってるやろ!」

「白石部長、同類やないですか」



馬鹿に巻き込まれているとプリコンの司会が出て来たよう。

どうやらもう始まるらしい。


「ごっつ綺麗な子おらんかなー」

「キモすぎるんでもう息も吐かんといて下さい」

「息!?息もしたらあかんのか俺は!」



化粧をして、美しく着飾った生徒が一人一人出て来る。

謙也は興味津々に見ていたけど、俺はやっぱりどうでもよくて、ポケットにある“アレ”をいつ柚に渡そうか悩んでいた。



「白石」

「ん?」

「あれ、なんやと思う?」


あまりにも呆然としながら言うもんやから、何事やと顔を上げた。


『エントリーナンバー8番!
四天宝寺が誇るスーパー少女、彼女に出来ないことはなにもない!って、え?数学苦手?
花風柚さん〜!』



姿を見せたのは、他の誰でもない。

ドレスを着た、柚がそこにいて。


思わず見惚れてしまった。

こんなにも白が似合う女の子が他におるやろうか。まるで天使みたいや。


緊張気味のその顔も、化粧がされているからかいつもと雰囲気が違う。



「あれ、ほんまに柚先輩?」

「…むっちゃ綺麗や」

謙也がそう言うのも無理もなかった。



やって、ほんまに綺麗すぎる。
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