白兎を追いかけて | ナノ







―――…



「く、蔵!」



後片付けを終えたらしく、出て来た蔵に飛び付いた。

少し、怒りながら。



「おー柚、ライブ大成功やったで」


当の本人は怒っているウチの様子に知らんフリで頬をつついて来た。


「最後のあれ何やねんっ。なんでわざわざ公開すんねん!」


「やってそんうちバレるもんやろ。言うたやろ?嬉しさのあまり報告させて下さいー、て」


そ、そんな嬉しいこと言ったって…!


「ウチ、ものっそい攻撃受けるで!女子から!」


「俺が守ったるで?」


「はっ、スーパー少女なめたらあかん」


「せやけど女の子は女の子やん」



まだ人がまばらにいるのに、ぎゅーっと力強く抱き締めて来た。

力強さのあまり抵抗するけど抜け出せん。


ちゅーか恥ずかしいねんけど!


「な?せやろ?」


またこれが不敵に笑うもんやから、ウチはこくこくと頷くばかりやった。

すぐに離されて少しガッカリ。

もうちょっとだけくっ付いていたかったなぁ。




「ほな、散歩でもせえへんか?」

「あ―…、っと」

「どないした?」

「ちょっと、用があって」

「?そうなん?」

「堪忍なぁ」

「少し残念や」

「ほんま堪忍。ほな、ここで……」


キョトンとする蔵に手を振った。


(プリコンに出るって、言えへんかった)


純白のドレス。今なら着れる気がすんねん。


真っ黒になったウチでも、蔵は受け入れてくれたから。

白でも黒でも灰色でも、恋する気持ちに変わりはない。



少なくとも、このドレスを着ている姿を見せたいという思いは、真っ白なんやないかなって思うねん。
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