白兎を追いかけて | ナノ




ビーという音が上演をお知らせ。

カーテンも閉められ電気も消され、真っ暗でなにも見えない。


ざわざわと騒ぐ生徒たち。

いつの間にかステージにいた一人の人物をスポットライトが照らし出した。

皆が彼の姿を目にして、静まり返る。


…わけがない。

何故ならそこにいたのは白石 蔵ノ介。


「キャ――!白石く―んっ」
「かっこいい〜〜!」

「白石くんこっち――っ!」
「こっち向いてキャ―!!」


歓声というよりむしろ悲鳴。

(…芸能人ちゃうねんで。)


にしても、ほんまにかっこいい。

スポットライトに照らし出されているからか、いつもより輝きが増していた。



「今日は、俺らテニス部のライブに来てくれておおきに!」


マイクにエコーされた声が体育館中に響き渡る。

たったその一声に、女子の強烈な悲鳴が次々に上がる。


…気持ちは分かる。

むちゃくちゃ分かるで。

やってむちゃくちゃかっこいい。



「ほんなら盛り上がっていくで。最初はこれや“like bored days”」


音楽が流れ、蔵の歌が始まる。

前奏を聞いただけで胸が疼く。

蔵の美しい歌声が響き渡ると、体育館内は凄まじい盛り上がりとなった。


「きっと君と夢見てた世界は
輝きと期待のそばにある」


君が、ウチやったらええのにと、蔵の美声に酔いしれながら深く思った。

途端、目が合って、微笑みが見えた。


蔵が視線を送り続けるもんやから、ウチのことを考えながら歌ってくれているのかと錯覚してしまう。


「そうさ二人目にうつる未来は
今から僕たちの未来さ」


蔵との未来を想像するウチは、強情やろうか。


でもね、思うねん。

辛いことを経験した分、蔵との幸せが、楽しい未来が待ってる気がする。


蔵が隣におってくれるなら、どんな困難も乗り越えれるから。


ウチらの道を、一緒に歩みたい。
- 164 -


|
戻る
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -