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「あと五分で始まるで」
「ほんま…緊張すんねんけど」
テニス部のライブが始まるまであと五分となった。
会場の体育館はというと満員御礼状態。
もう全校生徒が集まってんちゃうかってぐらいの多さ。
みんな見たいやろうからなぁ。なんったってあのテニス部のライブ。
ウチは一番前の真ん中の席に結衣と座り、まだかまだかとウズウズしていた。
「なんであんたが緊張してんねん」
「や…やややって、音外したらどないしようって、光くん声低いし、それに謙也が演奏し間違えたらどないしようとか」
「いや、あんた演奏せんやろ」
「せやけど〜…、やっぱ心配やん!」
胸を押さえて地団駄を踏むウチに一番の理解者はやれやれと溜め息をついていた。
呆れ半分、仕方なさ半分といったところ。
けれど笑っていた。
「柚の愉快な仲間たちの晴れ舞台なんやから、あんたは黙って信じとき。
テニス部の人たちやって、一番に楽しんで欲しいんは柚に決まってる。そのあんたがあたふたしててどないすんねん」
一番に楽しんで欲しいのが、…ウチ?
ほんまにそうやろうか。
そうやったら、この上ない幸せだ。
「なんか、…落ち着いたわ」
「せやろ。わたしのおかげやな」
「実はもう一つ心配事があんねん」
「なんやねん」
「みんなが蔵に惚れてもうたらどないしよ」
「バカップルやな〜。ほんまそういうのうざいっちゅーにん。
みんな一氏くんにメロメロに決まってるやろ」
「それこそないわ!うざいわ!」
「柚もみんなも分かってへんねん。四天宝寺の真のプリンスは一氏くんなんや!」
「モーホーがプリンスなんて嫌やわ〜」
「モーホー言うなや!いつかきっと女の子に目覚めてくれるてわたしは信じとる」
「無駄やって。あいつは小春ちゃん一筋なんやから」
「わたしが誘惑して目覚めさせたる!」
「あんた彼氏おらんやったっけ?」
あーだこーだ言い合いをしていると上演の時間になったよう。
体育館の電気がどんどん消されていった。
純白に包まれる結婚式
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