白兎を追いかけて | ナノ


それからも発声練習かのようにギャーギャー叫びまくりましたとさ。

隣にいた白石くんの鼓膜は破れる寸前やったと思います。

それなのに「無理やり入れてごめんな」と微笑む彼は神!
良子ちゃん、あんたの言うとおりやっぱり蔵は神様や!



「あ、写真館やて」

「写真部が開いてんねやろ」

「へぇー…」

「気になるん?」

「うん」


中に入ってみると、物静かそうな女の子が一人いた。

「こんにちは。思い出撮っていかれませんか?」


思い出、か。


「蔵、撮らへん?」

「ええに決まっとるやろ」

「お、やった」


「ほなここに立って下さい〜」と穏やかに促されて、ウチらは隣り合って立った。

ウチらの間に距離なんてなかった。

こん前までは人一人分の間があったっちゅーのに…。



ウチらが生きていく中で、変化はつきもの。

せやけど蔵とのこの関係だけは変わってほしくないと強く強く願った。


思い出を写真に。

“今”を刻みたい。



「好きやで、柚」

「え?」


―パシャ。


「あ、ちょ!今ウチ絶対変な顔してた!
わざとやろ蔵のアホ!」


「現像お願いなー」

「はーい」

「ちょ!無視すんな!」






願わくば、キミの隣に、ずっと……―――。
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