蔵との出店回りデートは最早グルメツアーのようになっていた。
ってかあれ?ウチなんかむっちゃ大切なこと忘れてへんか?
膨れたお腹を見て、青ざめた。
「あ、」
プリコンに、出るんやった。
し、しまった―――!
いや、ちょ、どないしよ!
完っっっ璧忘れてたわ!
優衣の嘲笑う姿が思い浮かぶ。
このお腹で、ドレス……着れるん?
(最後の最後でやらかしてしもた…。)
とりあえず、もう、食べられへん。
もう絶対食べたらあかん。
「お、ぜんざいやて。ここ入らんー?」
「食べへん」
「ほな入るだけ入ろうや」
っちょ、入ったら食べたくなるんですけど…!
蔵、絶対あれやろ。ウチが食べへん言うても自分だけは食べる派やろ。
なぁ好きやで?せやから食べようなんて言われたらイチコロなんやけど。きっとウチは誘惑に負けるからあかんねん。おん、止めましょう。
「ちょ、蔵ってば…!」
ウチのわけわからん思考も虚しく、蔵は引っ張るようにしてウチを教室に引き入れた。
あーもう蔵のアホ!
………って、あれ?
ウチらの視線の先では、どうやら見知った彼らが激しいデットヒートを繰り広げていた。
「もう無理っちゅー話や!
何杯先輩に食わせる気やねん!」
「は?先輩とか見当たらんのですけど」
「こ、こ!おまえの隣におるやろうが!」
「ほんま謙也さんとおったらぜんざいが不味くなるわ」
「ほな俺と食おうとすな!」
え?なに?あんたらデート?
…的な仲良し二人組。光くんと謙也がおった。
「お!白石と柚や!
財前のぜんざい大食い挑戦に付き合わされてるんや〜助けて〜な〜!」
「よっしゃ、柚。帰るで」
「気ぃ合うやん。ウチも丁度思ってたところやねん」
ウチらは迷いなく退室。
「なっ、ちょ!俺を置いてくんか!?裏切るんか!?薄情モン―――!」
堪忍な、謙也。
巻き込まれるんは死んでも嫌や(ハート)せいぜい頑張りや(ハート)
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