「ほな、行くで」
出発の合図のように差し伸べられた手のひら。
思わず硬直するウチ。
「?」
(よう分からんのやけど…。)
不思議に思って首を傾げた。
「ほんま、焦らすん得意なんやから」
「え?えっ?…ひゃっ!」
急に腕を引かれて視界がぐらりと揺れた。
引っ張られるんやなくて、優しく引かれるように蔵は紳士的やった。
繋がる手、絡まる指。
(これは所謂、恋人繋ぎ………!)
うわ、ちょ…心臓持たへんて。
でも嬉しい。手、繋いでんねんで。なんか……恋人みたいや!
(恋人、なんやけどな。)
「柚今日ポニーやん」
「…え?ん?……あ」
ししししまったー!
ウチまだポニーテールのままやったー!
やって、まさかウチん家で待っててくれてるなんて思わんかったんやもん。
外すタイミング逃してしもた―――!
「今日のラッキーアイテムは馬のしっぽやったんやねん」
「んなわけあるか。
そんなラッキーアイテム持ってたら怖いんやけど」
(ポニーテール=馬のしっぽ)
う゛〜〜〜苦しい言い訳やな。
素直に言うべき?いや、恥ずかしいねんけど。
「やって蔵がー……、」
「俺が、なん?」
「…好きって、言うから」
「え?」
あぁもうどうにでもなれ!
「ポニーテール似合う子が好きっていうからや」
勇気を振り絞って言って後悔、今さら羞恥が込み上げて来た。
蔵、引いてしまったやろうか。うん引いた。絶対引いた。
(あぁもう…最悪、)
蔵やって無言やし……、…?
「柚のアホ」
言葉と共に抱き締められた。
「あ、ちょ…人来る、て」
こんな、道の真ん中で。
嬉しいけど恥ずかしい。
複雑な気持ちなんやけど…。
「可愛すぎる柚が悪い」
「え!?…や、ちょっと!」
「似合うてるで、柚」
「あ、…お、おおきに」
なんか、くすぐったいなぁ。
恥ずかしいけどやっぱり、嬉しい。
髪を結んできて、よかった。
「柚とおったら学校にたどり着かんのやけど」
「立ち止まるのは蔵やろ!」
「立ち止ませるのは柚や」
「いや意味分からん」
「言うたやろ、可愛すぎる柚が悪い」
「ほんまに意味分からん!」
ほんま…両想いって、幸せやなぁ。
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