白兎を追いかけて | ナノ




朝食はご飯に味噌汁にお新香に卵焼き。

ウチの世界は薔薇色のように変わったのに、我が家の朝ご飯はいつも通り。


「娘にハツカレが出来たんやで。赤飯やろ赤飯!」


…なんて言えるわけもなく、黙って美味しく頂きました。



あー…早よ蔵に会いたいなぁ。

学校に行ったら蔵に会える。

無条件にキミと一緒に居れる。


「早く、会いたい」と疼く想いが静まってくれない。

いわゆる君、依存症候群の対処法は、キミに会わんと収まらんみたいで。


せやから、早く。


「ほな行って来ます!」


ドアを開けていざ発進!




「あ、おはようさん。柚」



(…………。)


え。



あ、れ?

ウチん家のドアってどこでもドアやったっけ?

いや、別に景色は決して変わってへんのやけど、おかしないんやけど。



「蔵…?」

なんでウチん家の前にあんたがおるんねん。


壁に体重を掛けて立っていた蔵は、ラケットバックをからい直してやんわりと微笑んだ。


「ほな、学校行こうか」


え、や…なにその余裕!

ウチは聞きたいことがいっぱいなんですけど!



「なんで、待ってくれてん…」

「折角朝練ないんやし、柚と登校出来るチャンスやろ」

「そう…やな」

「おん」

「前持って言ってくれてたらよかったんに」

そしたらもっと早よ出て来てたわ。


「柚の驚いた顔が見たかったんやって」

「そ、…そうなん?」

「ん。嬉しなかった?」


…っ。なに言うてん。


「嬉しいに、決まってるやろ」



ちょっぴり照れくさくって、頬を赤らめながらそう伝えた。


「両想いって、ええなぁ」


蔵はほんま幸せそうに笑ってた。


何気ないこんな会話もやけに熱を帯びていて。
ポカポカと心が温まる。



蔵の言葉に激しく同意。


(両想い……か)


ほんまに夢みたいに信じられんことで、でもそれはリアルなんやって隣にいる蔵が証明してくれとる。


体全体で、幸せを噛み締めた。
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