白兎を追いかけて | ナノ




「言うて?聞きたいわ」


蔵の優しい声が、心地よい。




好きって伝えるん?フラれるんがオチやないの?


フラれたって、ええ。

大事なんは伝えることや。


自分が傷つくで?いつものように逃げたらええやん

ウチは逃げへん。

ここで強ならなあかんねん。

 それにウチは蔵にこの想いを伝えたい。


怖いけれど、知って欲しい。

ウチがこんなにも蔵のことを好きなんやって。



「近付かんでなんて言ってごめん。触らんでなんて言ってごめん。
ほんまはそないなこと、全然思うてなくて…、」


蔵を傷付けて、ごめんなさい。


「こ、怖かったんや。蔵に深入りしすぎて…抜け出せれんようになるのが。
蔵とキスして…自分が、おかしなってしまって…それで、」


あぁ、なんか上手く伝えれん。


「うん」


それでも蔵は、真剣に聞いてくれていた。


上手く、伝えたい。


ウチの想いひっくるめて、蔵になんと言えば全てが伝わる……―?


心臓が、今までにない程早い。

指先が震えたけど、両手拳を握ったらそれは収まった。


右手に勇気を、左手に強さを。






「好き…やねん」



一つ溢れたら、想いは滑るかのように零れ落ちた。


「好き、蔵が……好きや」

ポロリ、と。


再び涙が流れ始めたのは、たくさんの気持ちと想いが混ざり合って、それが溢れ出しそうになったから。



「蔵のこと好き過ぎて、誰にも渡したないて思った。
蔵が大好きで大好きで、辛なった。蔵を想う度泣きたい思いでいっぱいに…っなって、ひっく…」



嗚咽が邪魔や。

蔵に、伝えれんやないの。


「ひっく…うぇ…ウチ、ま、真っ黒になってしもた。黒兎になって…しも、た」


白兎やって言われて喜ぶウチがいた。


ウチのイメージカラーは白なんやって、嬉しく思った。

やけど自分の黒い部分は隠さなあかんな、とも思った。



「こんなんやけど…ふぇっ、蔵が大好きやねん。宇宙一、大好きや。蔵がおらんと…っ、生きて行けんの」


こんなにも、どっぷり蔵にハマってしまった。

底なし沼のように、ただ沈んで行くだけ。



「やから、ひぐっ…佐倉さんの、ところに行かんで……!ウチの傍に、おって…蔵ノ介……っ」



心の叫びやった。
涙のせいで前は見えなくて、蔵がどこにいるのか分からなかった。


…けど、一瞬で包まれて。


その温もりから、蔵はここにいるんやって肌で感じた。




「もう、伝わったわ。充分…柚の気持ち伝わったで」
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