白兎を追いかけて | ナノ


正面に来て、再び座り込んだ。


目線は、一緒。


「なぁ花風、俺、花風のことが好きやねん」


真っ直ぐに迷いなく放たれた言葉。

ストレートすぎて、胸を撃たれた。


「うん」


知ってる。知ってるで。

やって薮内くんはいつも、ありのままの想いを伝えてくれるから。

ちゃんと伝わってる。


「これがほんまにほんまのラストや。花風の気持ち、聞かせて?」


「……っ」


ウチが、なんて言うか分かってるんに。


それでも薮内くんは優しい表情を浮かべて、待っててくれる。

自分が傷付いてまうことはお構いなし。


ウチはほんまに、薮内くんのこういう所が大好きや。



「ごめん…なさい。ウチは、蔵が、好きやねん」


歯切れが悪くても、一生懸命伝える。

すると薮内くんはあの独特の可愛らしい笑顔を浮かべて、「そっか」と呟いた。




「よっしゃー。俺の告白タイムは終了や!っちゅーわけで次、花風な!」

「え、ええ!?」


え、ちょ…いきなりなに言い出すんねん!


「俺はもう好きなヤツに告った。せやから次は花風の番、な?」


な?ちゃうし!

なんやねんその俺ルールは!


「蔵に、告白……」


無理無理無理無理!

今は無理!ほんま無理!


きゅっと身を縮こませると、ぶるると体が震えた。


「さっき、白石想うと辛いて言ってたやろ?」

「え…、うん」


「俺もな、花風想うと辛いねん。せやけどこうやって気持ちを伝えるとな、あー俺の想いが伝わった!って、スッキリするんや」


薮内、くん……。



「花風は今までずーっと白石を想って来たんや。誰にも負けへんぐらい、隣でずっと見てきたんや」


…そうや。


佐倉さんなんかに、負けへんぐらいウチは蔵を想って来た。

それは、たった一つの揺るぎない自信。



「なぁ花風、もうええやろ?自分を、救ったり?」


ウチを“救う”?


また、涙が流れた。

どうして薮内くんは、こないなウチを好きになってくれて、それでいて背中を押してくれるんやろう。


「ほんまに、ありがとう…」


ありがとうと何度伝えても、全然足りない。


「俺のために泣いてくれてるん?」

「本日は…涙腺が弱いねん……ぐすっ」


「花風が涙流してくれただけで、俺はもう充分や。たくさんの幸せをありがとうな」


やっぱり薮内くんは、笑っていた。

こないなウチを、好きになってくれてほんまにありがとう。



「ウチも…!薮内くんと友達になれて、ほんまによかった!ありがとう」



差し伸べられた、手のひら。


「握手!」


ニカッと笑って言う薮内くんは、やっぱりいつもの薮内くんで。


ウチらは笑顔で握手を交わした。

ウチは涙でぐしゃぐしゃの笑顔やったけど、心から笑えたから、ええの。
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