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屋上のフェンスから一つのカップルが見えた。
とっても、幸せそう。
あのカップルには、付き合うまでにどんな物語があったんかな。
すんなり付き合ったんかな?それともむっちゃ月日がかかったんかな?
想いが通じ合うのは、とても難しいね。
なんでウチの恋はこないに辛いの?
叶わんて分かってはいた。
けど、心の隅っこでは…もしかして、もしかして振り向いてくれるんちゃうかって、期待していた。
「ねぇ薮内くん…、辛いねん」
「…うん」
「蔵が好き過ぎて、諦めれんくて、辛いねん」
「…うん」
なんでよりにもよって、薮内くんに言うてんやろう。
「その気持ち、分かるで」
「……ごめん」
ウチは、残酷だ。
謙也と話した後、フラフラ彷徨っていたウチは薮内くんに捕まった。
ここは目立つから、屋上へ行こうと提案してもらって今に至る。
吹き抜ける風は、ぬるい。
涙は止まったけれど、心はあれからずっと泣き続けていた。
「ほんまは、花風のこと応援したないんやけどな。しゃあないよな…」
「…え?なんて?」
「ううん、なにもないで」
「?そっか」
屋上に沈黙が流れた。
薮内くんは、ウチが泣いとる理由を追求して来たりはせんで、黙って見守っててくれた。
「よし、」
切り替えとでもいうように薮内くんは立ち上がった。
「?」
どない…したのかな?
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