白兎を追いかけて | ナノ









嘘、や。


どうして。


どう、して。


なんで…、キス、してるん?



やだ、…嫌や。


蔵が、誰かのモノになるなんて、考えとうない。

ウチの脳内では、考えられへん。


世界が壊れる音がした。


奈落の底に突き落とされた。



(……かな、しい)


今までにない悲しみに、心臓が無くなってしまうんやないかと心配した。
ほんまにウチは、失ってしまった。




流れた、一筋の涙。


ポロポロ零れていく涙は、今まで我慢していた分止まることを知らない。


視界がぼやける。


蔵と佐倉さんは、…もうキスしてへんのかな?


よく、見えない。





「っ、柚!!」


あぁ、気付かれてしもた。


なんて言うん?なんて言いたい?

ウチにキスした言い訳でもする?




ええから。

許したるから。


ウチは、ほんまに幸せやったんやから、ええねん。


「違うねん、これは…!」


なにが違うん?

なにも否定することはないやろうに。



蔵の表情が、よく見えんわ。




なぁ、蔵、泣いてしまってごめん。


でも…こればかりは我慢出来んかってん。



責めて、ええから。


ウチの涙は重すぎるねん。
たった一粒で重量オーバーやねん。


せやから、背負わんでええ。



ウチの涙が墜ちるとき、それは失恋を意味した。



ばいばい、ウチの初恋。
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