嘘、や。
どうして。
どう、して。
なんで…、キス、してるん?
やだ、…嫌や。
蔵が、誰かのモノになるなんて、考えとうない。
ウチの脳内では、考えられへん。
世界が壊れる音がした。
奈落の底に突き落とされた。
(……かな、しい)
今までにない悲しみに、心臓が無くなってしまうんやないかと心配した。
ほんまにウチは、失ってしまった。
流れた、一筋の涙。
ポロポロ零れていく涙は、今まで我慢していた分止まることを知らない。
視界がぼやける。
蔵と佐倉さんは、…もうキスしてへんのかな?
よく、見えない。
「っ、柚!!」
あぁ、気付かれてしもた。
なんて言うん?なんて言いたい?
ウチにキスした言い訳でもする?
ええから。
許したるから。
ウチは、ほんまに幸せやったんやから、ええねん。
「違うねん、これは…!」
なにが違うん?
なにも否定することはないやろうに。
蔵の表情が、よく見えんわ。
なぁ、蔵、泣いてしまってごめん。
でも…こればかりは我慢出来んかってん。
責めて、ええから。
ウチの涙は重すぎるねん。
たった一粒で重量オーバーやねん。
せやから、背負わんでええ。
ウチの涙が墜ちるとき、それは失恋を意味した。
ばいばい、ウチの初恋。
- 142 -
← | →