白兎を追いかけて | ナノ


最後に泣いたのは、いつやったやろう。


小学校五年生の運動会やったかな。…そういえば六年生の頃も泣いた気がする。


とにかくウチは、泣き虫だったのだ。


中学に上がって、蔵に出会った。

部活もクラスも同じになって、とても仲良くなった。

蔵はモテる。そんなん誰もが知っている。


いつものように呼び出されて、告白されて、断って帰って来る。

そんな非日常的日常なある日の蔵の一言が、今でも心に残っている。


「泣かれるんは、やっぱり辛いわ。でも俺は、その想いを背負って行かなあかんのやろうなぁ」


それは、蔵の心の声やった。


きっと蔵は、重い重いいろんな人の想いを背負ってて、苦しくて仕方ないんや。

捨ててしまえばええのに、優しいからそないなことは絶対にせんのやろう。


「重量オーバーになったら、ウチが支えたるで」


ウチの涙さえも、蔵に背負ってもらう訳にはいかんねん。


その日から、ウチは涙を流さなくなった。

そうさせたのは、ウチの固い決意と蔵への想い。




――…



裏庭に、人気はなかった。


(あれー?嘘つかれたんやろうか?)


いやまさか。


…でも、こんな所に蔵がおるわけ、


ドクン。


木の陰に…見知った後ろ姿を見つけた。


ウチと同じ髪色、彼がたった一人やったら問題はなかった。


……せやけど、もう一人。


なんで佐倉さんがそこにいるん?

ドクン。






なんで、キスしてるん―…?
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