白兎を追いかけて | ナノ

―――…


時は過ぎて、文化祭一日目終了の時刻になった。


ホストクラブは一日しかせん予定らしいから、今日の内に片付けてしまう筈。


っちゅーわけで後片付けを手伝ったろ思って来たけど、後片付けも終わっていた。

ウチ、ほんまになんも加勢してへんな。


これからどないしようと思って壁に背を掛ける。


「あ、柚先輩、白石部長が探してましたよ」


……え?
蔵が?ウチを?

信じられへんと、瞬きを何度もした。

そんなウチの行動に後輩は首を傾げる。


やって…、あんなに突き放したのに。


「お、おおきに!」


嬉しくて、少しはにかんだ。

そしてそのまま走り出す。


こんなウチを、蔵は探してくれていた。

きっと、帰るときはいつも一緒やから、一人で帰らんようにと心配してくれてるんや。



蔵に、謝るべきや。

あんなこと言ってごめんって、言わなあかん。

このままやったらほんまのほんまに蔵を失ってしまう。


壁がどんどん厚なってしまう。


告白は…出来んにしても、謝ることは出来る筈。

弱虫なウチに、光くんが勇気をくれたから。


絶対絶対、大丈夫や。


「蔵ノ介見てへん?」

「あー白石なら裏庭に行きよったで」


裏庭?なんでそないな所に?

まぁええわ。


「おおきに!」


同じクラスの人にお礼を言って、またウチは走り出す。
はよ、早よ会いたい!



「あ、そういえば3組の佐倉と―――…、ってあ、いない」



弾む気持ちで向かった場所は、奈落の底やった。
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