「ほんで柚、誰指名する?」
謙也の言葉に我に返った。
あ……、せやった。
(どないしよう……)
「柚は特別に相席ナシにしたるで〜」
「おおきに、助かるわ」
それはつまり、前の客を追い出すっちゅーことやろ。
(……誰にしよう…。)
迷っていると、蔵と目があった。
その目はほんまに真剣で。合わせてられなくて、ウチはすぐに逸らした。
なんか…とっても気まずい。
(…早よ、決めな。)
なんで、やろう。
蔵と目が合っただけなのに、ウチむっちゃ焦っとるわ。
「じゃ、じゃあ――…!」
蔵と佐倉さんが抱き合う光景を思い出して、とても胸が痛い。
苦しくて仕方ない。
これじゃあまた、昨日のウチに逆戻りやないの……。
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