白兎を追いかけて | ナノ



――…



キラキラキラキラ〜〜。


えっと、あの…ここ何処ですか。


まだ文化祭が始まって間もないのに、二時間も待たされた。

優衣に諦めようて言ったけど、一氏くんと仲良くなるまで帰らんの一点張り。

ほんで散々待って入店〜。



「え」


入ったのは確か至って普通な筈の空き教室なんに――…。


中身はちゃうかった。

学校の教室という原型は一切残されていなかった。


なんかもう、完っ璧なホストクラブ。

部屋の飾りも照明も、ソファーもテーブルも。


そして……、


「おーっ柚やん!来てくれたんかーっっ」


…奴らも。


手を振って飛んできた謙也は、スーツが似合いに似合っていた。


「案外似合っとるやん」

柄にもなく謙也を誉めてしまう。

やって、…似合い過ぎや。


優衣はすぐさま一氏を指名して、邪魔したら許さんでーとウチに言い残して行ってしまった。

つまり、来るなと言いたいんやろう。


ウチはどうしようかと悩んでいた。


店内(教室内)をぐるりと見渡す。

あ、小春ちゃん女装してる。

銀さん…なんか、ヤクザになってへんか?

うっわ金ちゃん可愛いー!


そして、嫌でも視界に入ってしまった、蔵。

なりきりホストなんかやなくて。

もう、ほんまにホストやった。


回りの空気さえも、自分のキラキラとした雰囲気に変えてしまいよる。

あんなにスーツが似合う人、見たことないわ。


ゴクリと唾を飲む。

かっこよさのあまり、身震いがした。



やっぱり蔵は、遠い存在や。

ウチが手を出していい相手やないんや。


やっぱり来んかったらよかった。


お客として来ている生徒たちも、蔵にメロメロで虜になっとるし。


笑顔で楽しそうに喋りよるし。


蔵の輝くかっこよさに、再び思い知らされた気分や。
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