「は?」
え?先輩馬鹿ですか?いつもアホアホ連呼してますけどあんたが一番アホやないの。
…なんて省略されてそうなほど、馬鹿にした目でウチを見つめていた。
それでも、光くんが大きな声を出すのは滅多なこと。
少し、体が震えた。
「朝っぱらから俺の隣に隠れてたのも、関係がギクシャクしてたのも、原因はそれっちゅーわけですか?」
「え、うん。そうだよ」
「………………はぁ」
「え、なんやねんそのふっかーーい溜め息は」
「いや、柚先輩はほんまにブス…、アホやなぁと思いまして」
「今ブスって言おうかしたやろ。っちゅーか言ったな、うん」
「なんやねんほんま、合宿で色々やっちらかして迷惑かけられて何故か白石部長には敵対視されるわほんま最悪ー、やけどまぁくっつくやろうから許したろ思ってたらこれ。ほんま恋愛初心者って怖いわー」
え、ちょ、なんて?
恋愛初心者って所だけは綺麗に聞こえたで!
「柚先輩。白石部長と距離を置いて、苦しさから救われたんです?」
あ、えっと……。
救われるって思った。
少なくとも、救われんでも逃れられるって思った。
せやけど実際は違うて。
「さみしく、なった」
乾いた唇からは、乾いた声しか出なかった。
光くんは、宥めるように言う。
「きっと、後悔しますで。ほんまは分かってるんちゃいます?どないしたらええのかは」
…分かってる、つもりや。
せやけど…やけど。
「ウチは、臆病やねん。怖いねん。蔵に面と向かって好きやないって言われるんが……、」
やから、告白が出来ない。
これやからウチは、弱虫なのだ。
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