これできっと、蔵のことをスッパリ諦められる筈。
むっちゃ好きなくせに、ほんまに?
もとから、実るわけやないて分かってた想いやねん。
やからきっと、大丈夫。
もし蔵に彼女が出来たら?おめでとうって祝福できるん?
蔵に、彼女。
蔵と佐倉さんがキスをする光景が思い浮かぶ。
…嫌や。
考えるだけで、めまいがする。
せやけど、蔵にいつか彼女が出来るのは当然やから。
そんときは、認めんとあかんから。
他に道なんて、ない。
「なに泣きそうな顔してるんですか。すんません、むっちゃ不細工ですわ」
「うるさいわ。ブスなんは生まれつ……………………………、」
見上げて、あ。
「ひっ、ひっ、光くん!」
な、なんでここにおるねん!
「あ――…いちいち突っ込まれるの面倒なんで言っときますわ。サボってたらブスの気配がしたんで出て来ただけやて」
肩に掛かったイヤホンから、あー音楽を聞いてたんやー、って分かる。
って!このサボリ魔!不良!
「ブスいうなや!このイケメンめ!」
「…すんません。むっちゃ絡みにくいねんけど」
いつものノリも長くは続かない。
今日は、いつも通り笑っていられへん。
「ブスやから、好きな人にも振り向いてもらえんのかな…」
「………白石部長、ですか」
「うん。なんかな、駄目なんや。前はただ好きでそれでよかったんやけどなー…」
「今はちゃうて言いたいんですか」
「好き過ぎて、ウチがおかしなってしまったんや。やからちょっと潮時かなーって」
頬を掻くようにして苦笑いをするのが、ウチの精一杯の強がりやった。
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