白兎を追いかけて | ナノ


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蔵にあんな顔で謝られて、触れられて、決心が揺らぎそうになってしまった。

蔵から離れるという、一大決心が。


空はからっとした快晴。

ウチの心は大雨洪水波浪警報発動中。


屋上の片隅にて、ウチは溜め息をついては空を見上げた。


「サボっちゃった…」


屋上に来たんはいいんやけど、教室に帰れんようになってしまった。

やって、ウチは蔵を傷つけた。
自分が傷付くことを恐れて、蔵を突き放した。


「ほんま、最悪…」


蔵はきっと、ウチのことを嫌いになった筈。

これでええ。
これでええんや。


せやのに…なんやろ。

この空虚な感じは何なんやろう。


まるでウチは、空っぽのドールになったよう。


蔵を失って、ウチにはなにが残ったんやろう……。


でも、こうするしかなかったんや。


蔵を想うと苦しいねん。


甘さを知ってしまった分、ウチのモノではないという事実を突きつけられると、胸がはちきれそうになる。

真っ黒で嫌なことばかり考える自分が嫌いになる。


その結果、ウチは蔵を傷つけた。


蔵の悲しげな表情を思い出すだけで自己嫌悪は増すばかり。


…っ。


「ほんならウチはどないすればよかったんやねんー!」


モヤモヤが、募る。



あぁ、もう、ほんまに。


上手くいかんなぁ…。
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