柚の机までの長い長い道のりを、一歩一歩しっかりと歩んだ。
柚の席まで来て、取り囲んでいた友達に注目されたけどそんなん関係ない。
「なんでメールも電話も、シカトするんねん」
「………。」
やっぱり君は、目を合わせようとはしてくれない。
囲んでいた友達は、空気を読んで離れて行った。
「なぁ、ごめん」
無理矢理キスして、ごめん。
「ほんまに俺が悪かった」
柚の気持ち、考えとらんかった。
「…ごめんな」
なぁ、柚。
「…………。」
返事してや。
「柚…、」
なんでこっち、向いてくれへんの?
「言うたやん…昨日」
やっと開かれた口は、重々しい。
昨日って…?
「ウチに、近付かんでって言ったやん」
「ウチに…もう、近付かんで」
ズキン。
胸が軋んだ。
胸をえぐるような一言は、ガラスのカケラのようにとても鋭利やった。
俺にはもう、柚の隣にいる権利もないんか。
(そんなん、絶対嫌や。)
「有り得へん、…許さんで」
柚の隣を、誰かに渡すなんてことは絶対にしたくない。
するわけないやろ。
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