白兎を追いかけて | ナノ




「計測お疲れさん、柚」

「蔵っ!」


タオルで汗を拭きながら、歩み寄って来たのはテニス部部長の白石蔵ノ介。


「お疲れ様は蔵の方やて。タイム、10秒も上がったで」

「ほんま?通りで今日は調子ええと思ったんや」


なーに言うてんの。調子がいいとかやなくて、全ては蔵の努力の結果や。

毎日人一倍努力してんの…うちはちゃーんと知ってんで。

ドリンクを渡すと蔵は笑った。


「おおきに」


(…きゅん。)


あ、好きや。

ほんま好きや。

この一年ぐらい、ウチは蔵に想いを寄せている。


相手は四天宝寺一のモテ男で、プリンスで…叶わんて分かっとる。

せやけどウチの前じゃアホでバカでエクスタシーな優しい男の子。

蔵の背中を見つめながら想う。


(たこ焼きより…好きや)


「先輩、色気ないっす」


「!!!ひ、光くん!」


気付けば隣にいるピアス野郎。二年の天才ぼーやの財前光。


「比べる対象間違ってますわ。食べ物と比べられる白石部長が可哀想ですやん」

「せ、せやけどな!ウチからたこ焼き取ったらなにが残る思うてん!?」


「…野性的なモンしか残らんですわ」

「ぴかるくーん。先輩それの意味がよく分からへんわーあははははー」


「先輩、さっきの3000メートル一緒走るべきやったんやないですか?」

「ウチが3000メートルも走れるわけないやんー」


「白石部長抜いたら、洒落になりませんわ」

「……………。」


…にしても、なんでウチが蔵のこと好きなんばれてんのやろ。

小春ちゃんもユウジも千歳も気付いてるみたいやし……。

みんな勘がええんやなぁ。
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