白兎を追いかけて | ナノ



ぷにっ。


蔵に両頬を掴まれた。



「…いひゃい」

なにすんねん。


「ツンデレな柚も好きやで?」


……っ!なっ…!

「にゃに、いうへんっ…!」


なんやねん。

普通に怒るとこなのに、優しく笑うなんて……不意打ちや。


「こーんな変な顔でも柚は可愛いで」

「うほひふはー!(嘘言うなー!)」

「せやから機嫌直してや」

「(そんな単純に行くか!あほ!)」

ウチを手懐けとる思うてんか!


「……へへっ」


その通りや!


単純すぎやろアホ主人公!て思った皆さん。

やって目の前で蔵が極上に微笑んでるんやで!

しゃあないやろ!かっこよすぎやろ!

なんでも許したなるやろ!


蔵は、ほんまに、ズルい。

ズルいと思う。



“ヴヴヴヴ……”


机に置いていた携帯のバイブが鳴った。

薮内徹平と表示され、蔵の腕が自然と離れた。

どうやら薮内くんからの返信が来たよう。


「薮内と、メールしてるん?」


「あぁ…うん、まぁ」


携帯を開きながら、メールを確認。

あえて蔵を見らんようにした。

やって、声が低いんやもん。


メールの内容は、ウチのメールを喜んでくれているようで、よろしゅうなと続いていた。

「ふぅん……。アイツと仲、良いんやな」
「蔵やって、佐倉さんと仲良しやない。
メールやってしよるんやろ?」


うっわ、言ってしもた。

それはもうイヤミたっぷりに。


「佐倉さんは文化祭実行委員なんが一緒なだけやて」


あぁそうやった。
蔵は文化祭実行委員になったんやったな。

「メール言うても次の話し合いはいつとか、必要最低限やし」


当たり前のように言うから、イヤミのように言ったウチが恥ずかしくなってしまった。


佐倉さんは、きっと違う。

蔵との一通一通のメールに、好きを噛み締めて喜んでいるに違いない。
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