白兎を追いかけて | ナノ




………ヤバイ。


蔵、なにも言ってくれん。


こいつ、なに言ってんねんって、思ってるのやろうか。


次は違う理由で顔を上げれなくなった。


(ここここ怖い!)


待ち、冷静になり。


蔵は優しい男の子や。

そらもうウチが出会って来た中で格別やねん。

謝ったらきっと、許してくれる筈!


「ちょ、調子に乗り過ぎてしもた、ほんま……ごめ、」

おそるおそる顔を上げながらごめんと続けようとすると、思わず口が止まってしまった。


(え…、あ、嘘。)


ねぇ、蔵。

ウチの見間違いやろうか。

ウチが自惚れてるんやろうか。


未だにウチが言った意味が分かってないのか、茫然としたまま何度もまばたきを繰り返している。


「顔、……赤い」


ほんまに、真っ赤な顔で。


ウチの言葉で我に返ったらしく、包帯の巻いてある左手で顔を隠した。


「今のは柚が、悪いわ」

「……ご、め」


なんか…照れるわ。


恥ずかしくって、目を合わせていられなかった。

二人して、顔真っ赤にして、ウチらなにしてるん…。



一秒が、百秒に感じられる。

長く短い沈黙を破ったのは蔵やった。


「…約束する」

「あ、」


手のひらを握られて、胸がきゅんとした。

最近は胸を締め付けられることが多かったけれど、この行為は違う。


…とっても優しい。


切なくも、悲しくもない。

ただ純粋に愛しい。


「なにをしても、どこにいても。誓うで。…柚」


視線に思わずくらくらする。

あなたはいつも、甘すぎる。

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