白兎を追いかけて | ナノ

なんで音楽室にたどり着くまでにこないに苦労せなあかんねん。

今なら謙也、…やなかったメロスの気持ちが分かる気がするわ。


「やっと…着いた」


…むっちゃ疲れた。

メンタル的に疲れたわ。


切り替えて、ちゃんと蔵に言わな。

意を決して音楽室のドアノブに手を掛ける。


すー、はー。


(よし、行くで)ガチャ。ガン!


途端、額に走る痛み。

や、ちょまだウチドア引いてへん!


「…なにしてん?柚」


額のあまりの痛さにいつものように優しい優しいその声は、悪魔のように聞こえた。


「く、蔵のアホーー!ここまで来るん大変やったんにウチをどこまで苦労させればええんかーっ!」


「お…おぉ、堪忍。(…なんかめっちゃ話読めへん)うずくまって、なにしてるんか?」

「…おでこ打った」

「え?あ、もしかしてさっきの鈍い音は…」


ちなみに言うなら鼻も打ちました。

低い低い鼻がさらに低なってしもたやろ、アホアホアホ。

「ごめんな?痛かったやろう」

その大きく綺麗な手で触るもんやから、余計顔を上げれんようなった。


(あーきっと顔真っ赤。)


「許してくれるか?」

「…許さへん」


…許すわけないやん。


「むっちゃ痛かったんやから。地味にクリーンヒットしたんやから」



なんて、本当はどうでもええんやけど。


「せやから…文化祭で、ホストクラブしても誰にもなびかんって、約束してくれたら……許す」



…あ、あれ?

なんかウチ、言い過ぎたような。


誰にもなびくなって、…いや、蔵はウチのモノちゃうのに。

イコール、ウチ以外の誰にもなびかんで、みたいな。


(…大変なことを言ってしまった)
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