白兎を追いかけて | ナノ



プリコンに選ばれるモデルは、決まって美しいビューティホーな人。

パリコレのようにステージを歩くんやから当たり前。

そう、当たり前なんや。


「えっと――…、選ぶならもっと可愛らしい人を選んだ方がええて思いますよ」


ウチがプリコンに出るなんて、ありえへんやろ。

謙也と光くんに腹を抱えて笑われてしまうわ。


「嫌や、花風さんがええねん。
っちゅーか決めてたんや、絶対花風さんで出場するて」

「なんでウチなんー…、」


ウチよりずっと可愛い人も
綺麗な人も、この学校にはゴロゴロおる。

「花風さん、可愛ええやん」

「どこがやねん」


「それにな、ウチには分かるねん。磨いたらごっつキラキラ輝くんやろなぁって、所謂無限の可能性を秘めてるんやって」


……おぅ。

なんか今ウチ、むっちゃ嬉しいことを言われた気ぃするわ。

せやけど考えてみ。
ウチがプリコンのステージに上がる姿を。

「出場資格は女やっちゅー話!」
「モンスターコンテストちゃいますで先輩!」

…なんて言われるに決まってる!


「笹山さん、もうちょっと自分の胸に手を当てて考えた方がええで。人間皆、早とちりはあるもんやから」

「なんやねんその悟った感じ。その顔無性に腹立つわ。っちゅーか早とちってへんわアホ」


…ウチ以上のポイズンガールやな。

「ウチ、プロのメイク士になるのが夢やねん。やからお願い花風さん!モデルになってくれへんか?」


うぅっ…、そんなお願い攻撃には弱いんやて。

あかんあかん!
流されたらあかん!


「む、無理!」

「この通りやて〜!」


頭下げられても――…!


「堪忍な。
ウチには…出来へん」


「………そう」


悲しい顔したって無駄やって。

ウチは絶対やらんねんから。



「モデルしてくれたらごっつ美味いお好み焼き奢ってやるで」

「あ、すみませんやります」


「…………。」

「…………。」



パチリパチリと、二度まばたきされては真顔で見つめられた。

あ、ウチなんか変なこと言うたやろうか。
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