いうことを聞いてもらうって、なんやねん。
なんの命令か分からんやん。
「あの…蔵ノ介様。ウチの全財産はたかがしれてまして、」
「お金使わんて」
あ、そうなん?
じゃあ…なんなんやろ?
「体、使ってもらうで」
「なっ…!!!」
え……や、なに…いうてん。
待ちぃや。
ウチには出来へん。
無理に決まっとる。
蔵に限って、そないなことは……!
「肩叩きは100回まででお願いします!」
「いや、ちゃうし」
あ、よかった。
「とりあえず俺、着替えてくるわ。柚も着替えてき」
「えー…、はーい」
いうこと聞かなあかん内容がなんなのか、むっちゃ気になるんやけどなぁ。
まぁその内分かるやろ。
蔵は男テニの部室に向かう。
ウチの着替える場所は、校舎内の女子更衣室。
女テニと男テニ、どちらの部室でも着替えるわけにはあかんからな。
校舎に向かう最中、グラウンドへ視線が向いてしまった。
聞こえるのは、ボールを蹴る音。
ボールを蹴る音はたった一つのようで、それが薮内くんなんじゃないかという予感がした。
(もし薮内くんやったら、ちょっとだけ見たろ)
ちょっとだけやから、寄り道や。
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