部員も全員帰り、残るはウチら二人だけになった。
蔵が練習するんやろーってベンチに座っていた、のに。
「なんでウチが蔵と打ち合わなあかんの!」
パコーン!
「やって柚、普通に上手いやない」
パコーン!
「いや、ウチほんまに運動は…ちょっと、出来ても好ましくないというか、」
バコーン!
…うっ、決められてしもた!
今の本気で打ったやろ!
キッと蔵を睨みつければ、向かい側のコートで極上に微笑んでいた。
「ひざまずく柚なんて滅多に見られへんやん」
(なっ…!)
ちょ、これは、…ど、ドSモードに入っとる…!
え?なんなん?
機嫌悪いんか?
ウチが見つめたりしたから機嫌悪くなってしまったんか?
「んーっエクスタシー!」
むっちゃええやん!
何なん、ほんま。
すると蔵は、なにを思ったのかネットまで歩みよって来た。
「勝負や、柚」
「ん、…な!?」
「6ゲーム1セットマッチで1ポイントでも柚が取ったら柚の勝ち。柚に1ポイントも取られずに勝ったら俺の勝ちや」
「あ、遊びなん?」
「なに言うてん、真剣勝負や。柚が負けたら、俺のいうことなんでも聞いてもらうで」
横暴やて!なんで蔵の十八番で勝負せなあかんの!
「う、ウチはせんで!勝てるわけないやろ!」
「ちなみに柚が勝てばたこ焼き1ヶ月分奢ったるで」
な、なぬ!?1ヶ月やて?
…これは、聞き捨てならんで!
「たった1ポイントやで。俺がミスしたら柚の勝ちや」
「…そうやんな」
そしたらたこ焼き1ヶ月食べ放題。
「それに、スーパー少女って俺から1ポイントも取れんほど、所詮女子レベルなん?」
カッチーン!
「ぷっちんぷりんなこと言うてくれるやんエクスタボーイ」
「…や、エクスタボーイてなんや」
蔵の一言にて怒りモードにスイッチオン。
たかが1ポイントや!スーパー少女の名にかけて、絶対負けへん!
「勝負や!」
こうしてウチは、蔵の挑発に易々と乗ってしまったのです。
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