「葛西さん遊んでえ」




胡座をかいて、細かい器具のようなものを弄っている葛西さんに抱きつくと、慌ててそれらから手を放す。あ、仕事で使うものなのかな、これ。
あぶねえなあ、と呆れながら鞄にさっさと仕舞われた。



「ガキだな」


「子供じゃないよ、誘惑してる」



開かれたシャツの隙間から手を差し入れる。年の割にと言ってしまっては失礼だけれど、鍛えて引き締まった胸板を触るのが好きだ。しかしお腹は、‥相応。
葛西さんは首だけを動かして私の鎖骨あたりに唇を寄せる。微かな息づかいがくすぐったい、これはいつもだ。前髪からちらりと見えた、普通の人らしからぬ眼光に、すっかり私自身が欲情しているようだ。
勢いで、葛西さんのズボンにそっと手を伸ばした、が。突然立ち上がられ、私は半ばぶら下がるような形になる。



「あれ!?」


「済まねえなあ、明日少しばかり体力使う仕事があるんだ」


「‥‥‥魅力ない?」


「いやいや、おじさんは若い時に頑張り過ぎたせいで、最近すぐ疲れちまうのさ」



こうやって遊んでやるから、と、高い高いをされる。この方が疲れやしないかと思うのだが。これも、私を満足させようと考えてくれたことだ、嬉しくない訳がない。



「‥もう一回」


「お、気に入ったか」


「うん。あ、」


「?」


「若い頃頑張ったって、なにを?」


さてと、愛されついでにとことん困らせてみようじゃないか。

20100621