願うのは(転生現パロ)

 笹の葉と色とりどりの短冊と七夕飾りによって自分の顔が隠れていることに彼は内心ホッとしていた。彼の視線の先には7、8歳くらいの少女とその父親と思われる男性が、短冊を枝に結わえ付けていた。
 『へいちょうにあいたい ぺとら』とたどたどしい字で書かれた短冊に父親は首を傾げていた。
「へいちょうって誰だい?」
「へいちょうはへいちょうなの!」
「ハハ……先生か何かか…」
 彼女の父親は大人には分かりにくい子供特有の言動なのだろうと結論づけたようだが、そのやり取りを見ていた彼は嘆息した。
 何で覚えてる。どこまで覚えてる。本当に俺に会いたいのか。会ってどうするつもりなのか。
 ペットボトルの中身と共に言葉を飲み込んで、彼は再びため息を吐いた。今見かけたばかりの子供とも言える少女の短冊に、姿に、声にこうも心乱されるとは。
 彼とて彼女のことは覚えているのだ。彼女が今の彼よりも二歳ほど歳上の姿が、彼の知っている彼女だった。気が利いて時に強気で優しい、彼の大切な部下の一人であり、そして…。
 前は前だと彼は頭を振る。今の彼女は記憶の片隅でしか知らない彼に幻想みたいなものを抱いているのだと。
 では自分は彼女と会いたいのか、会ってどうするつもりなのかと考えた。今名乗りでたところで本当に彼女は分かるのかと。 
 自分と関わってまた不幸になるのなら名乗り出なければいいのだ。会わなければいいのだ。彼女も成長するにつれ、自分のことは忘れるだろう。短冊への願いも変わっていくだろう。
 そのことに一抹の寂しさを感じつつも、彼は笹の葉と七夕飾りのすき間から彼女の姿を目に焼き付けた。
 幼くもあの頃と変わらぬ蜜色の髪と琥珀の大きな瞳を輝かせる彼女を。

 
〈了〉




りばいさん17歳、ぺとらちゃん7歳くらいにこういう出会い?みたいなのがあって、なんだかんだで毎年神社に見に行ってしまうりばいさんと、毎年同じ願いをするぺとらちゃん…という話を描いてみたいなぁと。兵士時代のふたりの関係はハッキリとは決めてません。
ネタだけはいっぱい出てきます。手が追いつかないだけです;

 





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