変わる視線(エルヴィン→リヴァペト?)
これ以上ないくらい良い位置にカップが置かれた。テーブルに置いてあるリヴァイの書類の束に触れず、だが彼の視界の隅に入るように、かつ邪魔だと思われないように。
そんな絶妙な気配りをしたペトラに、リヴァイは目だけで応える。それに気付いた彼女の、嬉しそうに少し細くなった目に、リヴァイはまた満足げな表情を浮かべる。
やがて退出した彼女をやはり目だけで追ったリヴァイは、同じテーブルに置かれた書類の存在など眼中に無いかのようにカップだけを手に取り、彼女の淹れた茶を味わっている。

何と微笑ましいやり取りかと、普段ならからかいの言葉も出てくるのだが、書類と一緒にここに来た目的も、俺のことも忘れていないだろうか。
確かに味も香りも申し分ない茶だが、あのリヴァイがひとりの女にそこまで入れ込んでいるのだという事実を見せつけられている気がするのは、強ち間違っていないだろう。
俺の背中に、その前の壁の無い風景に、刺すように向けられていた視線が、今や傍らの彼女に柔らかく向けられている。

「リヴァイ、その書類には今度の壁外調査の問題点が書かれていてな…」

書類と俺にリヴァイの意識を向けさせるために声を掛けると、案の定ささやかな楽しみを中断されて、不穏な空気を漂わせ始めたリヴァイの視線とぶつかった。
だが、そのリヴァイと対峙するのも楽しみとは、俺もどうかしてるということなのだろうな。


〈了〉

フォロワーさんとのやり取りで、『彼女が傍らにいることで変わっていく兵長と、その彼女へ嫉妬というか複雑な感情を持つエルヴィン』…なつもりで140字で書いたもののロングバージョン。
腐的に書いたつもりはないんですが、読みようによってはそう取られるかもなと。
兵長もそんなあからさまな態度は取らないだろうなとは思いつつも、話の都合上…(^^;)


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