気付かない幸せ
「地下室のエレンが起きなかったのは分かるけど、あのひっどい風と雨で目ぇ覚めなかったのか?」
「そんなにひどかった?」

古城の廊下で、驚き呆れるエルドと別の意味で驚いているペトラ。
どうやら昨日の夜から降り出した雨がだんだんひどくなり、しかも強風まで伴って古城の窓の鎧戸やその周りの森を大きく揺らし、そのあまりの激しさにエルドやグンタ、オルオは飛び起きたという。
エレンは地下室であったから気付かなかったようだが、夜が明けてみれば、確かにあちらこちらにたくさんの葉やそれなりに太い枝まで折れて落ちているところを見れば、ちょっとした嵐であったのは間違いないだろう。

「お前、あれで起きなかったら兵士としても普通の生活でも心配だぞ」
「…そう、ねぇ…」

昨晩の激しい風雨で起きなかったのなら、不審者が部屋に入ってきたぐらいで起きるわけもなく…

「どうした、エルド」
「あ、兵長。おはようございます。昨晩のひどい風と雨…」
「ああ。あれはひどかったな。まあ、またすぐに寝たが」
「ペトラのヤツ、全然気付かなかったって…」
「みたいだな」


……ん?

エルドの頭の中に妙な違和感がわいた。
兵長とは今日はいま会ったばかりで、それはペトラも同じはずだと思うのだが、今の言い方はまるで昨晩のペトラのことを知っているようではないか。


ペトラもペトラで、ハッと気が付いた。
昨晩は兵長と一緒だったのだ。兵長の私室で…同じ寝台で…触れ合ったまま…


「…えーっと、俺、食事の準備の途中なんで…」
「鍋を火に掛けたままじゃなかろうな」
「いえいえ。それじゃあ」

曖昧な笑みを浮かべて立ち去るエルドは気付いたかもしれない。
どうしようと頭を抱えたくなったペトラの頭を、リヴァイの手が先に包み、彼の肩口に引き寄せた。

「確かによく寝てたな」
「…兵長が温かすぎるのが悪いんです…エルドに気付かれたかも…」
「…昨日のお前のように、気付かない幸せがあることをアイツも分かっているさ」

クッと口の中で笑うと、リヴァイはペトラの額に軽く口付けを落としてから、彼女と共に食堂に向かった。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -