世界が違って見えた
こんな世界もあるのかと、物珍しく新鮮に映ったものも、見慣れてしまえばやがて気にも止めなくなる。
地下街から陽のあたる街へ、そして壁外へ…壁外は風景自体ありふれたものだ。住宅街があり、牧草地があり、森があり…違うのは人間の代わりに巨人がいることくらいだ。
だがその違いに、始めは戸惑った。聞くと見るとでは大違いだとつくづく思ったものだ。
しかし、慣れというものはここでもやはり存在する。命のやり取りに慣れたわけではないが、世界は同じに見えてきた。


ーそれを初めて見たとき、色自体はごくありふれた、刈り取る前の小麦色だったから何も感じなかった。
視界の隅をかすめる程度から、どんどん近く、だからと言って邪魔になるわけでもなく、むしろ見ないと不安すら覚え…ありふれた色は見慣れた世界を違うものにした。俺の世界で欠かせないものになった。


あの色は、もう無い。
いつかそうなることも分かっていた筈なのに、考えようともしなかった程、あの色を、彼女を…


また世界が違って見える。あの色を見る前とも、あの色があった時とも違う世界。
たったひとつの色が無いだけでこんなにも変わるなんて、彼女に会うまでは知らなかった。

ー知りたくなかった。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -