「私、我が儘なんです」
ろうそくの炎の揺らめく向こう側でペトラがポツリと呟く。
彼女の側まで歩み寄りながら、それなら負けねえと思ったが口にはせず、見上げる彼女をきつく抱き締め、そのままベッドに倒れ込む。洗い立てのシーツの香りと、ペトラから匂い立つほのかに甘い香りに導かれるように、その白い首筋に唇を押し当てた。
「ホントですからね。知りませんよ」
甘い吐息と共に、俺の背中におずおずとペトラの手が回される。
「もっとそばにとか、もっと触れてほしいとかなら、俺もだから我が儘なんかじゃねえぞ」
そうなんですか…と、小さく呟くと、
「じゃあ、今はそれ以外に無いです」
そう嬉しそうに微笑む彼女と、一晩中シーツの海で溺れた。
結局、何かしてほしいとかはついぞ聞けなかった。
聞けはしなかったが、見慣れた優しい字が連なる文面に見つけることが出来た。
"あなたに全てを捧げます"
…ったく、大した我が儘だ。そんなのきけるわけねえだろ。
そんな我が儘、最後に通すんじゃねえよ。