右腕話の2





最初の内は『シュラは嘆きの壁にてあんなにも輝かしくその魂を燃やし尽くして消えてしまったでは無いか、幻聴にも程!』とか思っていたのだが声は次第に大きく、はっきりと聞こえる様になって来る。
そして遂にその姿迄見える様になったのだ。

そうして今に至る訳で、この現象はどうしたものか、誰に相談すべきなのか、そもそも医者等に相談した所で信じて貰えるのか、信じて貰えなかったらお薬を処方され一生病院から出して貰えなくなったりするのかなとか、紫龍は時折遠い目をしながら明後日の方向に思考を飛ばすのであった。

だが幾ら現実逃避をしたくても右腕に目をやると上半身のシュラが嫌でも目に入るのが現実。
男同士なので上半身裸な男が目に入っても問題は無いのだが、常時出っ放しなシュラに見せたく無い所の方が多いのも紫龍にとって問題であった。

例えば春麗との甘酸っぱいやりとり・別に世間一般的に何らうしろ暗い事等していないのだがこれは他人に見られるのは恥ずかしい。
そして排泄行為・非常に居たたまれない気持ちになるので、出すのも拭くのも今では左手で行うのが常になってしまった。

そんな日常生活に支障を来す右腕に『そこまで聖剣を極めたい訳では無いのだが…(自分は所詮龍座&天秤座だし…)』と思う事もしばしば。

「紫龍、あの木の実は何なのだ?」
「あの女性が食している食べ物は何と云うのだ?」
「紫龍、今のテレビであの男は何と叫んだのだ?」

聖剣関連だけでは無く、異文化な中国の全てに興味を抱きちょくちょく尋ねて来るシュラは思いの外無邪気だ。

「俺とシュラって、ミギーとシンイチみたいですね。」

と、思わず溢す紫龍であった。






 ある日紫龍は久々に甘い衝動に目を覚ました。
目を開ける直前迄見ていた夢は、漠然とした何か大きな物に包まれてゆるゆるとした気持ち良さに全身浸って居た物だった。
何かが警鐘を鳴らした瞬間、紫龍は目を覚ました。

まさかと思い右腕を動かすと下履の中にある感触が伝わり、思わず冷や汗も背を伝う。

掛け布団を蹴飛ばし飛び起きると無意識の成せる技でか、右腕はベットリと白濁を纏いシュラは申し訳無さそうに目を伏せて居た。

「す、すまないシュラ!!
今拭く!て云うかコレは…俺の意思では無くて、その、「イヤ、こちらこそすまなかった!お前は未だ若いのにそういえば俺の前では自慰行為すらしていなかったな…。
気を使わせてすまない!これからは健康の為にも俺に構わず抜いてくれ!!」
「イヤイヤイヤ!無理ですから!貴方に見られながらなんて申し訳無さ過ぎますから!!」
「だがこれでは身体に悪いし洗濯物も、その、春麗にバレたら気まずいんじゃないのか!?」
「貴方に見守られながら抜く方が気まずいです!!」

だから引っ込むかどっか消えて!!と続く言葉は何とか飲み込むが、それには気付かないシュラは更に余計な心配をする。




[ 37/38 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -