ミ○キーは乳の味





「こっちだ!追え!!」
「逃がすな!反逆者を殺せェ!!」

近代的な灯りが一つも無い険しい山道で物騒な怒声と共に数多の篝火が一人の男を追っていた。

星と月明かりである程度は見えるが前述の通り周りには村落も無い山の中である。
その闇の中を追われる男はまるで日中と差異等無い様に走り抜け、追手達の放つ矢も槍もまるで見当違いな方角に投げているかの様に当たらない。
それもその筈、追われる男は人知を越える力を持つ聖闘士なのだ。
しかもその中でも最高位の黄金聖闘士。
その名は聖域付近に住む者ならば知らぬ者は居ないと迄云われた稀代の聖闘士・射手座のアイオロスなのだ。

そしてその彼が何故無数の聖域の者達に追われているかと云うと、その胸に抱く赤ん坊が事の発端であった。

とにかく今は逃げるしか無い。
逃げてこの子を安全な所にーー、

生きて逃げ延びる。その事だけを考えて走っていたアイオロスの足先に先程迄とは違う、地面が真っ直ぐに斬れ数秒後に遅れて衝撃波を伴う鎌鼬の様な攻撃が襲いかかる。

「…ッ!! シュラ!話を聞いてくれ!」
「問答無用!裏切り者め!! くらえ!」

今迄追手の雑兵達の攻撃を難なく躱し、叩き伏せて来たアイオロスが今度は防戦一方になる。

黄金色の鎧を身に纏い、未だ声変わりを済ませていないしなやかな身体の少年は、黄金聖闘士になったばかりの山羊座の聖闘士・シュラであった。

「止せ!シュラ、止めるんだ!!」
「煩い!アイオロス、お前こそ何故こんな事を…!」
「………、」

答えろ!と鋭い声と共に手刀が煌めきアイオロスを追い詰める。
やむを得ずアイオロスも背にしていた黄金聖衣を身に纏い、シュラを退け様と必殺の技を放つ。

だが幾ら追われる身と追手と云う立場に変わっても、幼い頃から身近居た少年はアイオロスにとってもう一人の弟の様な存在。
本気を出せる訳も無く、シュラは吹き飛んだだけなばかりか、その身を案じてアイオロスが隠して居た赤ん坊の近くに降り立つと不敵に笑うのであった。

「どうしたアイオロス?この赤ん坊ごと俺を倒せば良いではないか…、」


※ここ迄は大体、アニメ65話の回想シーンでした。ここからはろっすら話になりまつ。※


シュラは不敵に微笑むと、足元をうごうごと這う赤ん坊を片手で掬い上げ胸に抱くとアイオロスにやれるもんならやってみろ、と挑発する。

この赤ん坊が何なのか分からないがアイオロスが聖衣と共に大事に抱えて居たのだ。
(あの、弟のアイオリアさえ聖域に残して!)
打てる筈が無い、と確信しながら。

そしてその読みは当たっていてアイオロスは顔を赤らめて腰を引き躊躇している。

後は足を狙って動けなくすれば良い。
動けなくなれば殺す事無くアイオロスを止められる。
シュラはそう思い手刀を再び構える。
だがその時、

「あ〜〜!っぱい!ぱい〜!!」

胸に抱いていた赤ん坊がシュラの胸に吸い付いた。

「!?」

「あぁ!あてなちゃん!! そこはぱいぱい無いの!
あと、ソコはアイオロスお兄ちゃんのだからめっ!」
「!!??」
「あ〜〜ぅ!ぱーい!」





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