昏睡姦の2





まずは朝食を取り、汚れた衣服を脱いで風呂に入る。
そしてまた出掛けようとした瞬間、弟のアイオリアに捕まってしまった。

「兄さん、偶には執務室で仕事をして下さい!
一々十二宮を登り降りする雑兵や文官が可哀想だ。」
「仕事なんかどこでやっても同じだろう?彼等だってそれが仕事だ!体力作りにもなるぞ?」
「良い迷惑ですよソレ…。とにかく、兄さんが近くに居ても目が覚めるとは限らないんだ、あんな男に「アイオリア、」

アイオロスは真顔で弟の言葉を遮り窘める。

13年。その長い間、弟とシュラの間には修復されないまま大きくなってしまった溝があるのは聞いてはいたが、どうやら相等根深いらしい。

それでもアイオロスはアイオリアの事が可愛いし、13年間の成長を見届ける事が出来なかった事に関しては後悔すらしていた。
シュラに対しても特別可愛いがっていた後輩であったし自分の事を背負って生きたであろう13年間を思うと、やはり放っておけない。

そして昏昏と眠り続けるシュラに対していつしかアイオロスは庇護欲が沸き、身の回りの世話を始めたのだがそれがまた弟の不興を買ったらしい。
やきもちをやく弟も可愛い等と思っていたが、今の言い方だと本気でシュラの事を嫌っているのが分かってしまった。

「私はシュラに早く会いたいんだ。早く目を覚まして欲しいし早く話をしたい。
これはまるで恋してるみたいだと思わないか?
そしてそんな相手を悪く云われるのはアイオリア、お前であっても私は嫌だ。」
「…………、恋って…」

突然の兄のカミングアウトに弟は呆けたがその姿を見て兄は、もしや!?と斜め上に思考を飛ばす。

『!? まさかリアも、嫌う素振りを見せながら実はシュラを!?
ツンデレか!? ツンデレなのか!?』

弟の13年間も意見も意志も無視した疑念は更に成長する。

『そういえば確かに、唾棄すべき存在とか聖闘士の風上にも置けないとか色々云う割にシュラの事をよく見てるよな…、やっぱりリアは…、』

「…ッ!シュラの意見も聞こうな!!??」
「!? ハイ!?」

これまた突然過ぎる言葉を言い捨て走り去る兄に対して、アイオリアは返事を返す事しか出来ないのであった…。






 聖域入口付近にある診療所まで全力で十二宮の階段を駆け降りたアイオロスが着いた頃、麓の宿から若い女性が笑顔でこちらに向かって来るのが見えた。
彼女は診療所に詰め、1日に数度シュラの身の回りの世話をしてくれる専門の看護師だ。
万が一に備え看護の知識のある者まで配置してくれる女神に改めて感謝すると同時に、そこまでされているのだから本当に必要とされているのだと云う事をシュラに伝え、1日も早く目を覚まして欲しいともアイオロスは想う。

「おはようござます、射手座様。今日も早いですね?」
「あぁ、おはよう。…今日も何かしてやれる事は無いかな?」
「気持ちは解りますが焦りは禁物ですよ?そういえば、今日は何時もと違う香りのお花を持って来てみましたの。」

何かの刺激になれば良いかと思って…、と続く彼女の言葉にアイオロスは反応する。

『…良い刺激…何時もと違う香り…、そうだ、シュラは私の臭いが好きだと言っていたな…(※当時シュラ七歳) よし!!』




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