昏睡姦ってイイよね!!話





 聖戦の勝利者となった今生の戦女神はその権利を大いに活用する事で、三界の和平交渉に於ても他の二神に恩を売りまくり暫くの間自他共に認める実質上の地上の支配者となる事に成功するのであった。

即ち、冥王をアゴで使い、聖戦やら何やらで死んだ者達全てを生き返らせ元の世界へと何事も無かったかの様に再配させたのだ。

海の者は海へ、地の底の者は地の底へ、女神の者は女神の元へ。

そうして次々と人々は甦り、仲間達とその地に住まう人々に再び会えた喜びと感謝の祈りで以て更に女神を讃えるのであった。

しかし全ての者が全てそうとは限らぬ様に甦りを拒む者も各界に少なからず存在し、女神の元に戻された者達の中でも例に漏れず、身体は現世に戻されても心は未だ目覚めず・といった者達も少なからず居た。

彼等の生前の行いや性格からして仕方無い、と云う意見もあったが女神はそれでも諦めずに、彼等全員が復活するまで慈悲深くただ静かに待ち続けるのであった。






「…何故こんな所で寝ているんですかアイオロス?」

早朝の朝露よりも冷たい声と共に踏みつけられた衝撃にアイオロスは目を覚ました。

「アレッ!? おはよ、ムウ!!」
「おはようございます…。何で貴方は毎朝この辺に転がっているんですか…。
ちゃんと自宮か私邸で寝て下さいよ。」

ムウは呆れながらも起き上がるアイオロスに手を貸す。
その言葉通り、アイオロスはここ数日ばかし朝になるとムウの散歩コースに転がっている事が多く、うっかり踏んづけてしまう事が多々あった。

絶讚復興中な聖域で黄金聖闘士の要ともあろう人物がこの様な場所で、と小言を始めるとアイオロスは弾かれた様に立ち上がり十二宮へと駆け上がって行く。
その際に『少し顔を見せてあげてよ、』と声をかけるのを忘れない辺りが本当に小狡い、とムウは思いながらその駆ける背に手を振るのであった。

云われなくとも散歩のコースには件の『未だ甦らぬ仲間』の中の、山羊座の黄金聖闘士の様子見も組み込んである。

今朝も見た所変わり無く眠り続けているし、床擦れも無くバイタルにも変化は無い様だし枕元の水差しや花も真新しい。
誰がやったとは分からなくとも恐らく仲間達が直したり換えたりしているであろう寝具に乱れも無いし、カテーテルやおむつ等も下界から通うグラード財団傘下の医療法人の者が時間になればやって来て世話をしてゆく。
(ムウならそんな事をしないで、内容物を直接テレポートで廃棄した方が早いと思っているのだが)

それでもアイオロスは山羊座聖闘士の眠る施設にやって来ては心配をして、朝までああして居るのであろう、とムウは思って居た。

「全く、否合理的にも程があります…。早く目を覚まして下さいよ。」

そう呟くとシュラの顔に当たる様に朝日が射し込むカーテンを少しだけ開けるのであった。







 アイオロスは自宮には寄らずそのままの格好で教皇宮へと飛び込む。
朝飯前に自身の仕事をこなす為に。

自身の仕事と云っても個人的なメールチェックと、聖域中に蒔いた検索網の報告文を纏めるだけであってものの数分間で終わってしまう。
なので、出勤して来た者達のこめかみに青筋が立つのを眺めながら入れ違いに退勤する。
頭の中をこれからの予定で一杯にしながら。





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