よくある断罪話





 真の女神の可愛らしくも頼もしい演説から一夜明け、神をも凌ぐ力を求めた男に寄って破壊された町並みやライフラインも復旧し、皆が日常を取り戻そうと聖域内外では皆が皆、忙しく動き始めている。

そんな中、十二宮へと続く天の道への麓の神殿では黄金聖闘士と様々な立場の高位の神官等が集まっての査問会議が開かれていた。

新たな女神は、16年前から先日まで続いていたあの事件の関係者全てに罪は無かったと公言した。
だが、それだけで終わるには物理的にも心理的にも衝撃が大き過ぎた。

特に真の英雄を討ち取り逆賊呼ばわりしていた山羊座の男には。

「何かしらの罰を、と貴方は言いますが女神がああ言った以上、誰が貴方を裁けるのかと先程から言っているのですがね?」
「ならさっさと新しく教皇を選べとこちらも言っている!
アイオリア、お前がなれば尚好都合だ。
お前なら俺を罰する権利は腐る程あるんだ!」
「こちらも断るとさっきから言ってる!
俺にはそんな権利も教皇になる気もなれる様な実力も人望も、無い!!」

何かしらの罰が己に無ければ気が済まないシュラは、主にムウとアイオリアを相手に会議開始後からこうして主張し続けていた。
確かに、女神が未だ女子高生を営み続ける事を望んで地上に戻ってしまった今、新たに教皇を頂かねばならぬのも聖域の急務でもあったが。

「ならばムウ、お前がなれば良い!師を失い聖域から山奥に追い出されたお前なら、」
「いい加減にして下さい。
貴方だけが罪を犯した訳じゃないんですよ?
ここに居る者達も、いえ、聖域に居る者全てに責はあるのですから。」
「そんな訳あるか!!
イヤ、あったとしてもアイオリアは…、」

「なら、アイオロスに聞けば良い。」

それが手っ取り早いだろう、と事も無げに今迄黙って聞いていた乙女座の黄金聖闘士のシャカがポロリと口にする。

「…お前なァ、そんな事、」
「私には出来るぞ?イタコ世界選手権口寄せ部門でブッチギリ連覇な私ならば。」

そんな事が可能なのか?とか、そんな選手権あるのか?等、会議場に居た全員が怪訝な表情で言葉を亡くす。
だが『では、裁決しようか。』と、シャカは一人で会議を進め、結局数人の神官を除くほぼ全員はシュラの罪を認めなかったのでこの場の査問は終了となり、後にアイオロスの口寄せ査問を夜中に開催する事となった。






「…それで、何で俺まで…、」

「君には見届ける義務がある。と、この男が煩くてな。」
「当たり前だ。誰のせいで長年日蔭者扱いされたと思ってンだ。
俺が憎いだろ?アイオリア。」
「…原因はサガ、だろ。

それよりシュラ、その格好は…」

その日の深夜。
シャカは口寄せの場に人馬宮を選び、一行は騒々しくも射手座の聖衣の前に集まった。

例のアイオロス直筆サインの壁の前に、長年行方不明だったがやっと還って来た射手座の聖衣がオブジェクト形態で置かれ、その周りにはアイオロスの遺影や花束や蝋燭等が飾られ、ちょっとした献花台の様な・若しくは観光スポットの様な祭壇となっている。

その前に『山羊座聖闘士は有罪、処決裁断すべし』と挙手した神官と全てを記録する書記官が五名と、アイオリア、そして口寄せ名人のシャカと、雑兵服に虜囚風に荒縄で縛られたシュラが並ぶ。





[ 1/38 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -