夢の精と三点倒立





 邪武はこの期に及んで尻込みをしていた。
目的の白羊宮は目の前なのにたった一歩、踏み出す勇気が出ない。

「何やっているんですか人の家(宮)の前で先程から?」
「うわーーーッッッ!!??」

一角獣の青銅聖闘士はいきなり掛けられた声に驚き、産まれたての子鹿の様に腰が砕けて立てなくなってしまった。

それを介助し白羊宮に入れて、暖かいお茶を与えて一息着かせた所で白羊宮の主のムウは同じ質問を邪武に掛ける。
因みにこれが気に食わないor面白味の無さそうな者の場合は難癖付けて金銭を巻き上げたりしているムウであった。(例・アイオリア等)

「聖衣修復依頼でも無く、私が暫定的に復興中の教皇になって居た事実を蒸し返して賄賂持参で私欲を叶え様と来た訳でも無い。
となると何ですか?弟子も要りませんよ?貴方、眉毛太いし。」
「いえ…あの、」

あの弟子は能力重視云々とか、星の導きがどうとか世襲制とかじゃなくて眉毛制?とか色々突っ込み所はあったが邪武は未だ言い淀む。

アルカイックな微笑みと、紳士的な態度の裏に潜む短気はどうでも良い人間に程発揮されるムウは、じっくり本人の口から聞くよりもさっさとテレパシーで解決する事を選んだ。

「!! 貴方、よりによって幼女の股間の感触を忘れられないだなんて!!」
「!? 何の…!?」
「この…!食らえ!青少年健全育成法!!」






 ここ数日邪武は悩んで居た。
幼少時にラッキースケベ的に体験してしまった沙織とのお馬さんプレイ。
その記憶が最近、毎晩の様に夢に出てしまい朝までにパンツ三枚は履き替える毎日を過ごして居た。

このままでは自分は沙織に会うどころか、遠くから見つめる事すら犯罪な人間になってしまうのでは!?
そう思うと日常の生活すらままならなくなり、修行地の師匠に相談でもしようか?と、思い悩んで居た時に偶々、聖域に用があるとか言ってた氷河にくっ付いて邪武も悩みを相談出来そうな大人な人間を求めて聖域へとやって来たのであった。

そしてその結果がムウの必殺技であった…。






 アイオリアも犬小屋を前に悩んで居た。

「また子犬が増えたのかグラグラ!!」

何となく不敵な面構えが気に入り、シュラに反対されながらも拾って来た雑種犬(四歳♂)はその面構えを更にグレードアップし、今にも葉巻をくわえて踏ん反り返りそうな顔で3匹の子犬達を侍らかして日向ぼっこをしていた。

思えばこの犬とは激動の年月を共に過ごした、謂わば戦友とでも云える仲であった。
しかし、12宮での反乱劇でどさくさに紛れて叩き斬られたシュラの片腕を聖衣パーツごと小屋に持ち去り、あろう事か、秘かに食していた事が判明し、聖域の者達に『人肉犬』と怖れられる存在になってしまっていた。

また、黄金聖闘士なアイオリアの飼犬だけあって犬の潜在能力を超える強さを誇り、子孫増やしまくりのボス犬でもあった。

「どうした?グラグラ、」

子犬を見てまた飼い主探しか!! と、思いつつも可愛い盛りの子犬にアイオリアが思わず初孫を見る老人みたいな笑顔を浮かべていると、犬小屋から何とも聞き覚えのある声が聞こえて来た。





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