バカップルの2





 思えば幼い頃からムウとは親しく接した事が無かったが、果たしてこの様な性格だっただろうか?と、思っていると矢張りその想いも聞こえたのか、

「聖域を出てからですね。」

と、笑顔で反して来た。

シュラはいっその事思念だけで会話をした方が早い気がして来る。
だが、それにも

「それでは『会話』にならないじゃないですか。」

と、言われてシュラは無駄な事は考え無い様にする事に努めた。




 幸い聖衣の修復はすぐに終わり、献血後に少し休んで夜になる前に山を越えるつもりで暇を告げるとムウは聖域に送る、と申し出てくれた。

しかしシュラは有難い話だが、と断る。

「折角の下界だ。少し外の空気を楽しみたい。」
「まるで仮釈放中の囚人みたいですね。」

シュラの本音にムウが揶揄すると、シュラは即に《『仮』でも無いし『みたい』では無い、自分は罪人だ。》と、今度はムウに言葉には出さないまま意志を向けると振り返らず歩き始めた。
ムウに対する罪悪感にも背を向けて。







 暫く無心になって歩いていると、数日前のアイオリアの言葉では無いが本当に自分は生まれ付いた星座のせいか山歩きが得意だった事を今更の様に思い出し、ここでもアイオリアか、と自笑する。
そして山の頂付近に差し掛かると、久しく見る事の無かった美しい夕焼けとジャミールの山々の峰尾との絶景にシュラは暫く見とれて立ち尽す。


願わくば聖域に居るであろう友(主にアイオリア)と、いつかこの美しい夕陽を一緒に見れます様に、と聖域には居ない女神に願うのであった。



その同じ夕陽をムウも見ていた。
だが、シュラの様に美しいと感じる心も、共に見たいと思う仲間も自分には無い事を思い、苦笑する。
シュラはティタノマキアで培ったアイオリアとの親愛の情に寄って、少しだけ心に余裕が出来たのだろう。
だが自分は未だ聖域を、そして『教皇』を許せないし許す事は出来ない。
果たして自分が聖域に帰還するのは何時の事になるのか、沈み行く夕陽にムウは聖域の行く末を重ね、見守るのであった。
(ついでにシュラ×リアの頭悪そうなカップルの行く末も)



バカップルと夕陽・<了>







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